GRAND PRIZE

Kinematics Dress

nervous system(アメリカ)

Category : PRODUCTS
By nervous system(アメリカ)

Kinematics Dress

3Dプリンターで作られたワンピース。何千ものパーツで構成されるこのワンピースは、1枚に畳まれた状態でプリントされるため、人が組み立てる必要はありません。この作品は、デザイン、シミュレーション、デジタルファブリケーションを組み合わせることで、複雑でカスタマイズ可能なものを作る、という新しいものづくりの形を示しています。

人の体は3次元であるにも関わらず、従来から衣服は、平面の素材を切り、入念に繋ぎ合わせることで作られてきました。それと対照的に、『Kinematics Dress』では、着る人の体をスキャンし3次元で作るため、繋ぎ合わせる作業が一切必要ありません。ワンピースは小さく折り畳んだ状態で3Dプリントされるため、3Dプリンターよりも大きな服も作ることができます。

このドレスは、何千もの三角形のパネルが蝶つがいで繋がれてできており、着る人の体にぴったり合います。パネルはナイロン素材で、3Dプリンターで全て繋がった状態でプリントされます。一つ一つのパーツは固いですが、服全体は、体の動きに沿い、滑らかな生地をまとうような着心地です。これまでの布地とは異なり、堅さ、ドレープ、柔軟性、多孔性、パターンを様々に変化させられるのも特徴です。 『Kinematics Cloth』というアプリを使うと、ワンピースの大きさやスタイル、柔軟性や模様のカスタマイズができます。

http://n-e-r-v-o-u-s.com/projects/sets/kinematics-dress/

制作プロセスと使用機材について

ナイロンのSLS(レーザー粉末焼結)で3Dプリントで作られています。折り畳んだ状態でプリントしてあり、余分な粉を取り除くと、そのままワンピースとして着用できます。

メンバー

Creative Director
Jessica Rosenkrantz
Chief Science Officer
Jesse Louis-Rosenberg

JUDGES, COMMENTS

  • 田中浩也

    田中浩也

    田中浩也
    慶應義塾大学SFC准教授、FabLabJapan発起人

    デジタルファブリケーションの研究の世界では、プリント後に可動/変形する物体の設計・生産方法が探究されており、もっぱら「4Dプリンティング」と呼ばれている。本プロジェクトはその可能性を伝える嚆矢である。また3Dプリンタでは出力サイズに制約があるが、小さく折り畳んだ状態でプリントし、あとから押し拡げて展開することで、機械よりも大きなものをつくる、といった技術も彼らは開発している。nervousのような、小さなチームだが技術のR&D(研究開発)とデザイン(社会へのインパクト)を両方担えるようなデザインエンジニアリングファームこそが、今後のFabの領域を牽引していくだろう。

  • Quake Hsu

    Quake Hsu

    Quake Hsu
    Zeczec 共同設立者

    3Dプリントの服ときくと、多角形のパーツでできた分厚い服や、彫刻のようなパーツを布にくっつけたものをイメージしてしまう。しかし、『Kinematics Dress』は、そのようなイメージと違い、プログラミングで正確に作られた小さなパーツでできたドレスである。メッシュ構造により、ドレスを完璧に体型にフィットさせているので、着た人は自由に動くことができる。3Dスキャンと3Dプリントが正確になされれば、このドレスは、今までのドレスよりもフィッティングやカスタマイズの点で優れた服になるだろう。本作で使われた技術は、ファッションデザイナーの作業やデザイン方法を根本的に変え、アパレル産業に革命をもたらすかもしれない。今後様々な分野で、この技術は応用できるのではないか。『Kinematics Dress』の可能性は無限だ。

  • Luke Yeung

    Luke Yeung

    Luke Yeung
    Architectkiddプリンシパル

    『Kinematics Dress』は、非常に身体にフィットする服である。ドレス全体の素材感は柔らかくしなやかであるが、全体は固いモジュールで構成されている。パラメータで寸法をコントロールするという点や、全てのパーツをつなぐ蝶つがいまで、精巧なデザインと製造プロセスに驚いた。本作は市場を革命的に変えるものではないかもしれないが、ファッション分野においての3Dプリンティングの大きな進歩であり、デザイン業界においてのデジタルファブリケーション応用の重要な一歩だと思う。

  • 四方幸子

    四方幸子

    四方幸子
    クリエイティヴキュレーター

    纏う身体にフィットする形状、有機的なパターン、動きに沿って生み出される優雅なシルエット…。まずドレスの美しさに魅了された。Fab的には、たたみこんだドレスをコンピュータ上で作成、出力後に3Dプリンタよりも大きなサイズとして広げるという発想が秀逸である。ボトムアップの構造に向きあうことでドレスから建築までをつなげていく可能性や、身体の「皮膜」としてのFabによる衣服の未来を感じた。完成度の高い製品を作るデザイン会社として展開されているが、ラボを持ち、アート、科学、技術を駆使した新たなデザイン領域を開いている側面でも評価した。

  • 齋藤 精一

    齋藤 精一

    齋藤 精一
    ライゾマティクスクリエイティブ&テクニカル・ディレクター

    今までのプロトタイプ感のある3Dプリントドレスではなく、3Dプリンターでだからこそ出来る構造・素材・プロダクトだと思いました。ディテールのインターロックの構造やポリゴネートされたデザイン、機能性・デザイン性・マテリアル等の全ての調和が美しくかつ効率的にできていると思います。この作品をきっかけにこのようなドレスの分野が更に進化することを楽しみにしています。

  • Luki Huber

    Luki Huber

    Luki Huber
    プロダクトデザイナー

    3Dプリンターの限られたスペースに収めるため、大きなドレスを折り畳み出力するというアイデアがグランプリの決め手でした。本作は、この種のテクノロジーの新しい境地を切り開いたといえるでしょう。おめでとう!

go page top

go page top