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Minima | Maxima

Minima | Maxima

MARC FORNES / THEVERYMANY

Category : GENERAL
By MARC FORNES / THEVERYMANY (アメリカ)

作品について

Minima | Maxima (最小値|最大値)には、両極端なものが共存しています。わずか6mmのごく薄い骨組みと、13mにも及ぶ高さ。それらは無秩序に広がる、複曲面によって成り立っています。頑丈でありながら風変わりで、角よりも曲線の美しさが際立つ作品です。分岐、分裂、再結合を行うことで、柱や梁は必要ありません。“ネットワーク化された”表面が回り込み、囲いや敷居、限界という先入観をひっくり返すような空間を作りながら、建物自身を支えています。建物の土台に向かうと、曲面は柔らかな波形になり、そのジグザグが地面と交わると、折り目の中にやさしく畳み込まれます。視覚的な変移、つまり折り畳まれた土台から滑らかな複曲面が連続する表面への変移はわずかでありながら、その構造的な効果は顕著で、驚くべき高さを維持しています。すべての方向に湾曲していながらも、まっすぐに自立できているのです。 このプロジェクトは私たちの作品の中でも、最も高く、最も薄い独立型の作品です。二重曲率により強度を得たごく薄い自立型の組み立て方法により、構造の完全性を達成しました。革新的な”structural stripes(構造上の帯)”を様々な方向性に重ねることで、複雑な表面を構成し強化しています。

 

https://theverymany.com/projects#/world-expo-17-astana-kz-1/

 

制作の動機

Minima | Maxima(最小値|最大値)は、建築と工学のイノベーションにおいて歴史のあるイベント、2017年アスタナ国際博覧会の依頼を受けた作品です。博覧会のテーマである「未来のエネルギー(Future Energy)」に応え、このパビリオンは、最小限の材料を最大限に活用しています。カザフスタンのアスタナ市の会場の目立つ場所に、常設展示物として展示されています。急速に発展するこの街を訪れる人々が関心を寄せ、遠目からも好奇心を刺激され、遊んだり発見するほか、中に入って静かに瞑想する機会を引き出す場となっています。

制作方法

この建物では、3層の薄いアルミニウム製の細い帯を(白帯でピンク帯をサンドイッチするかたちで)交互に重ね合わねて、高さを出しています。1つの層が独立して存在することはできず、それぞれの層は、全体を支え、また全体に支えられます。
この方法の革新的な点は、多数のひだを作っていくことにあります。物理的には等方性または無方向性の構造材料であるアルミニウムが、パターン化した複合的様式の中で異方性(方向性)のある構造特性を持つようになるのです。
炭素繊維やガラス繊維などのファイバー技術と比較されることが多いですが、炭素繊維とは異なり、個々の構成要素に張力をかける必要がないのがユニークな点です。組み立てには型や一時的な足場も必要なく、機械的に結合しているため建設中にシステムの再組成および修正が可能です。

使用したツール​

Cutting machine, 3D Modeling and Design Software

JUDGES, COMMENTS

  • 田中浩也
    慶應義塾大学環境情報学部教授
    SFCソーシャルファブリケーションラボ代表

    デザインにおける伝統的な美意識である「ミニマム」と、デジタルファブリケーションから生み出されつつある新しい美意識である「マキシマム」の両極を内包した美しい構造物である点が評価されました。

  • Mitchell Joachim
    Terreform ONE 共同創設者
    ニューヨーク大学准教授

    アイコニックな作品特徴を見て、THEVERYMANYのものとすぐにわかりました。美しく数学的な詩が効果を存分に発揮させるように、見事で複雑な形状の作品で、巨大な大きさとは裏腹に、今にもぷかぷかと浮遊していってしまいそうな見た目をしています。制作の設備や軽量素材の使い方が素晴らしく、特に超巨大メタオブジェクトの細やかな組み立てには驚かされました。見事な別次元のモデルであると同時に、爽快な気持ちにさせてくれる建築物でもあります。ブラボー!

  • Cleo Huet
    デザイナー
    Haute Ecole des Arts du Rhin 教授

    建物の形以上に、建て方に唸らされました。コンセプトもよく練られており、この複雑な形を
    都市規模で実現できる可能性もあります。建物の形と、技術的な建築の方法が見事に融合していて、新しい可能性の想像を掻き立てられます。

  • Julia Cassim
    京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab. 特任教授

    デジタルなモノづくりのポテンシャルを素材、技術、さらに構造の面で、ダイナミックかつ意欲的に表現しています。

  • 福原志保
    アーティスト
    BCL 共同創設者 、Poiesis Labs CEO

    素材としても先進的だし、美しくて挑戦的ですよね。個人の活動ベースだったFabとは違った、より大規模で予算のかかったプロジェクトで、大きな組織にもYouFab応募の可能性を開いたという意味で面白いと思います。