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FabBiotope

島影圭佑

FabBiotope

Concept

 〈FabBiotope〉は方法論を中心とした知の流通によって自立共生する弱視者やエンジニアを増やすプロジェクトである。島影が自身の父の失読症をきっかけに、文字を代わりに読み上げるメガネ〈OTON GLASS〉を仲間と共に発明し、そこから発展する形で生まれたのが〈FabBiotope〉である。ここではプロジェクトの参加者である弱視者とエンジニアを「当事者兼つくり手」として同じ水平面上に立つ者として招く。それによって福祉における依存の問題、情報技術における格差の問題にアプローチし、その先に今まで存在することが難しかった個別性や多様性がありのまま存在する社会を夢想する。

 具体的には、独自の工夫によって自らの生き方をつくっている弱視者と協働し、似た課題感を持つ弱視者に向けて、書籍やワークショップの形で当人の方法論を中心とした知を流通させる。同じくエンジニアの場合も、主にメディアアーティストや情報工学研究者と協働し、当事者として情報技術を造形する型を流通させる。またこれら実践の過程で紡がれた関係性を元に、弱視者とエンジニアで協働して発明を実践し、同様にそこで生まれた知を流通させていく活動への発展を企図している。

 そしてこの活動によって生まれる共同体自体を、新たな個別性や多様性を存在させる社会であるとし、そのオルタナティブな社会を造形することに取り組み続けているのが本プロジェクトである。

 多様性の問題は複雑な社会課題である。であるからこそ超個人的に取り組む必要がある。情報技術の民主化を前提に今一度その目的を問い直す。創造的な弱視者やエンジニアの個別のからだのふるまいをひとつの答えとし、デザインリサーチの技巧によって書籍などに編集し流通させる。メディアによって人間像自体が定義されることを前提に、新旧のメディアを横断しそれを個人が取り戻す試行錯誤、本投企ではその実践性を重視している。

島影圭佑

Japan

起業家。父の失読症をきっかけに文字を代わりに読み上げるメガネ〈OTON GLASS〉を仲間と共に発明。自立共生する弱視者やエンジニアを増やすプロジェクト〈FabBiotope〉に取り組む。近著に『FabBiotope1.0→2.0』 、『Prototyping with OTON GLASS』 (株式会社オトングラス、2021年)がある。