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祈る花瓶 -8.9Nagasaki-

祈る花瓶 -8.9Nagasaki-

Vase to Pray Project

Category : GENERAL
By Vase to Pray Project (日本)

作品について

祈る花瓶 -8.9Nagasaki-は、2000~4000℃の熱風で変形した瓶を、スキャニングし3Dプリントした花瓶です。瓶の変形の原因は、70年以上も昔、長崎に落とされた原子爆弾によるものです。
長崎原爆資料館に保管された被爆資料である花瓶を、CTスキャン技術と3Dプリント技術を使って、忠実に再現しました。被爆地の人でさえも触れることができなかった被爆資料に、様々な場で触れることが可能となりました。

http://vtp.jp/

制作の動機

若い世代の人々へ向けて、平和について考える“きっかけ”をつくりたい、という想いから「祈る花瓶」を作りました。

戦後70年以上たった近年、日本は若い世代を中心とした平和意識の低下・ 希薄化が強く懸念されています。誰でも欲しい情報が手に入る時代、いかにその情報が大切であったとしても、人々は 「知りたい」と思わなければ情報を手に入れようとはしません。知らなければ考えることも、ましてや行動に移すこともできません。平和継承のためには今、「知るきっかけ」が必要だと考え、私たちは現代技術を駆使し、体験型の新たなアプローチで次の世代へ「平和について考える」きっかけを与える作品をつくりました。

制作方法

長崎原爆資料館に保管されている、被爆資料である瓶を特別に借り、マイクロフォーカスX線CTシステムを使い3Dデータをスキャンしました。3Dデータを元に、ナイロン粉末造形の3Dプリンターにて造形しました。

使用方法

被爆体験を継承する“アート”として、そして平和を祈る“花瓶”として実用されています。
・アートとして
触れる機会を新たに作ることで、今まで被爆体験などについて知る機会がなかった人々へ、継承する為のアート作品として使用されています。展示では、作品に直接触れることができ、被爆者の言葉も展示されています。

 

・花瓶として
この花瓶に花を生けることで、皆さんの日常の中でも、平和について祈るという事が身近に感じられます。

 

さらに見る、聞く、だけでなく、「感触で知る」という新たな継承が可能になったので、今後、盲学校の生徒たちが平和学習で、この瓶に触れて戦争の悲惨さを感じるという授業が行われます。

使用したツール

3D printer

MEMBER メンバー

デザイナー・代表
毎熊那々恵
プロダクドアドバイザー
高橋直樹
デザインプランナー
澤田昂之介

JUDGES, COMMENTS

  • 福原志保
    アーティスト
    BCL 共同創設者 、Poiesis Labs CEO

    「記憶のアーカイブ」という大きなテーマを、人々に問題提起している点で興味深いと思います。戦争という人間として最も醜悪な行動、原爆兵器という科学史上最も凄惨な産物を、今、私たちの記憶に刻むことは重要です。戦争に関するテーマを美しいデザインの花瓶という形で表象したことで、戦争の残虐さが薄れてしまわないか、歴史を伝えるには適正なのかが、審査員の間でも問われました。この議論は、ある意味で、物が持つ物語性をうまく示していると思います。長崎での原爆の記憶を生活で使う花瓶として、日常の風景に溶け込ませたこの作品は、アートとは違う「プロダクト」しても可能性があります。日常の中で、思いがけない時に戦争について思い出し、会話が始まるかもしれません。