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「ファッション x バイオ ー拡大するFABとバイオがもたらすファッションの未来」イベントレポート

By FabCafe Tokyo

こんにちは。YouFab Global Creative Awards 事務局です。

8/15より1週間にわたり東京・渋谷で開催された “SENSORS SHIBUYA FASHIONCODE WEEK”。YouFab Global Creative Awardsでは、「ファッション x バイオ ー拡大するFABとバイオがもたらすファッションの未来」というテーマで、トークセッションを開催しました。当日はバイオアート、コンピューテーショナルデザイン、生物学、ファッションと専門家をゲストにお招きし、アワードチェアマンの福田氏のモデレーションでお話を聞きました。

今回、ファッション&テクノロジーをテーマとしたイベントの中で、なぜあえて「バイオ」をテーマにしたトークセッションを開催したのか。それは私たちYouFabアワードも、今年はバイオ分野からの応募に注目しているから。当然、世間からのバイオへの注目度も高く、イベントは早くから満員御礼となりました。

トークセッションは、ゲストそれぞれ話の点を結んでいくと、ちょっと先の未来から100年後までの未来が像を結ぶような刺激的なお話でした。本レポートでその全てはお伝えできませんが、一部トークの様子をお伝えします。

 

清水陽子さんは、科学と芸術を融合するテクノロジーやインスタレーションを研究し、グローバルに制作と発表を行う理系の現代芸術家。葉にフィルムを取り付けて、葉緑体にグラフィックパターンに沿って光合成を行わせる「Photosynthegraph(フォトシンセグラフ – 光合成印刷)」をはじめ、植物や花の様々な科学的な特性を扱ったインスタレーションや、細胞や有機物を増殖させる造形作品など、観るものを神秘的な気持ちにさせるバイオアートを多く制作しています。
清水さんは、「バイオアートの魅力は、生き物の力を借りて制作するので、自分の想像を超えた美しいものができたり、生産物や生産工程がエコロジカルであること」また、「いろんな生物によっていろんな素材をつくることができ、最先端テクノロジーだけれど、有機的なものができる」といいます。「バイオでつくるものは、生き物とともにあるので、つくられる過程もナチュラル、でてくるものも天然の温かみがある。今後、様々な分野で躍進がおきると思う。興味がある人はぜひトライしてほしい。それが、アートだけではなく、世の中の躍進にもなると思います」

現在アーティストとして活動する一方で、3Dクリエーターとして様々なプロジェクトに参加するSUN JUNJIEさん。もともとはファッションの出身であるSUNさんは、今は、コンピューテーショナルデザインの分野で活躍しています。ファッションブランドYuima Nakazatoのコレクションでは、Stratasys社の3Dプリンターで造形したアートワーク及びアクセサリーにより国内外から注目を集めるほか、様々な企業へのアートワーク提供を行っています。

3Dプリンター×バイオ×ファッションの一つの例として、MITメディアラボの教授、ネリ・オックスマンによる「彷徨う人」シリーズの作品を挙げます。また、ファッションではないですが、医療の現場では、最先端の3Dプリンターを利用して心臓の模型を作り、手術の練習をするということも行われていることを挙げます。

農研機構 カイコ機能改変技術開発ユニット ユニット長という肩書きを持つ瀬筒さんは、“遺伝子組換えカイコ”および“遺伝子組換えシルク”の最先端研究を行っています。2000年に世界ではじめて遺伝子組み換えカイコの開発に成功し、暗い中で光をあてると光る、”光るシルク”を作りました。スプツニ子!さんや桂由美さんともコラボレーションした“光るシルク”をご存知の方もいるのではないでしょうか。

SUNさんに対して、「カイコのシルクタンパクで3Dプリンターを使って何か作ってほしいですね」という瀬筒さん。タンパク質は、体に埋めると自分の組織に戻っていくので、再生医療でも使用が期待されるそう。医薬機能成分を含むシルクも可能で、抗がん剤をカイコでつくる時代も近くなっている、と言います

異分野のアーティストとのコラボレーションプロジェクトも多い瀬筒さんは、今も、カイコを使ってどんな新素材ができるのか、またどうビジネス化できるのか、アイデアを探しています。

「ファッション×バイオという今日のテーマは、ファッション業界的には新しすぎる分野なんですよ、笑」というのはファッション週刊紙「WWDジャパン」記者の横山泰明さん。

ファッション分野には、今2つのイノベーションが起きているといいます。一つ目は、プロセスイノベーション。アディダスやナイキなどの大手企業が、プロセスを単純化し、ワンプロセスで服や靴を作るような工場の建設に取り組んでいます。そして2つ目が、バイオとも関係が深いマテリアルイノベーション。私たちが今着ている服は、ほとんどがコットンやポリエステル。「世界全体では約9000万トンの糸が世界でつくられていて、そのうち58%がポリエステルで約25%がコットンです。ポリエステルは1953年の工業生産の開始以来、生産が伸び続けてきました。(資料)

今、そのポリエステルを始めとする石油を原料にした合成繊維を大きく変えようとしているのが、新素材メーカーのSpiber(スパイバー)社です。石油を使わずタンパク質を原料として、糸をつくるため、エネルギーが小さくてすむ、多様な設計の糸をつくることができます」。

最後にモデレーターの福田が、「科学が進化して生物界のことがわかってくると、生物界は私たちの想像以上に、アルゴリズムとコードの塊であるということがわかってきたと感じる。より解明が進むと、現実をどうどう変えていくのか。いろいろ面白いものが作られる可能性がある」と閉めました。イベント閉会後は、ゲストに質問をぶつける人の列ができていたり、参加者した皆さんの熱量もとても熱いイベントとなりました。

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