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Textile Story

Textile Story

Witaya Junma

Category : GENERAL
By Witaya Junma (タイ)

作品について

この作品は、フィルムの代わりに織物を使用する映写機に触発された。 この作品では、美しい伝統的なタイの織物模様を使用している。その模様は整然とデザインされて縫われており複雑で、それぞれのラインで模様のサイズが対称に、すべて同じ間隔で配置されている。このようなパターンの対称性はアニメーションの作成に使われる。視覚の永続性により、脳が動画として認識するまで高速で静止画像を入れ替えるという技術だ。 観客はこの作品を、アニメーションか、織物を作る過程でうまれた映画を見ているかのように認識し、伝統的なタイの織物模様の裏側に物語が織り込まれているように思うだろう。

制作の動機

 

私たちの作品作りは、独特で伝統的なタイの織物模様に触発されている。模様は小、中、大、といったサイズや色合いが様々だが、興味深いほど細かく繊細にデザインされてひとつの織物に織り込まれている。 作成過程で伝統的なタイ織物の同じ模様が対称的に織り込まれ刺繍され、一枚の布地ができる。この結果、サイズや間隔が異なるパターンが混在し、一部は例外はあれど基本的には伝統的なタイの織物模様に基づいている。 織物模様のアニメーションは、その後にある隠れた物語を表現する。模様が古代に作成されたものであっても、時間、文化、伝統、信念を通じて描かれる。観客がそれを見る時間は、アニメーションを観ることや映画を見ることに似ている。模様に織り込まれたものから形作られ、伝統的なタイの織物模様を通して物語がリズミカルに描かれる。 この作品は、伝統的な織物模様の美しい物語を表現することから離れ、それを再び生活の中に戻すことで観客に新しい視点を示し、周りのものに隠されたメッセージがあるかどうか問いを投げかけ、私たちの目は私たちが知っている以上に多くのことを知覚できることを気づかせる。

制作方法

この作品では下記の事柄を考慮し、3種類の伝統的なタイの織物模様が慎重に選ばれた。 ・Baan Had-SiewのTeen Jok Handicrafts(伝統的なタイの織物を使用) ・Tai Lueの織物(新しくデザインされ、刺繍されたもの) ・Saewの織物(新しく設計され、刺繍されたもの) 模様はコンピュータにコピーされ、適切なサイズにされコンポーネントが作成される。いくつか例外はあるものの、基本的には伝統的な模様に基づいている。その後、コンピュータが搭載されたブラザーPR-1050Xというミシンでデザインパターンに従った刺繍が施される。 完成した織物はベルトシステム上に置かれ、輪になるよう両端が縫い付けられる。次に後で上映用にするため、アニメーション制作を真似てフィルムの代わりに織物を使用する。この技術では、制御された速度でベルト上の織物を回転させ、Persistence of Visionを作り出すストロボライトを動作させる。この結果、模様が生き生きとアニメーションに見える。 このアートワークはストロボライトのレートを制御するが、アニメーションの速度と方向は多様な模様やサイズ、ストロボライトのレートに依存する。

仕様

この作品は、サイズ(幅x長さx奥行き)50×70×23cmの3枚の布で構成されている。3D印刷技術を使用したベルト方式を用い、主構造は総重量30kg(3枚)の木材で作成した。

JUDGES, COMMENTS

  • 林千晶
    株式会社ロフトワーク 代表取締役

    織物には、不思議とその土地や人の営みが表されている。何気ない模様やテクスチャに、風土、食生活、文化が自ずと反映されているのだ。タイの伝統的表現が、現代のデジタルファブリケーション技術で再編集されることで、どこか懐かしい未来に出会った感じがする。機織をするタイ女性の息づかいが聞こえてくるようだ。