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8.1-10.31
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REPORTS

Democratic experiment(s) talk vol.02 ~Special Prize event~ event report

YouFab Global Creative Awards Committee

2012年に創立され、今年10周年を迎えるYouFab Global Creative Awards 2021では作品を絶賛募集中。今年のテーマは、”Democratic experiment(s)”です。

YouFab 2021では、Panasonicをパートナーに迎え特別賞として「Panasonic賞」が設けられています。9月3日に開催されたオンラインイベントでは、審査員であり、アートや科学の分野で国際的に活躍するアリアン・コーク氏と、パナソニックの池之内章氏を迎え、今年のテーマである”Democratic experiment(s)”のそれぞれの解釈や、応募者に期待することについての議論が交わされました。

YouFabとは何か?

YouFabが設立されたのは2012年。3Dプリンターやレーザーカッターなどの技術がまだ新しかった当時、デジタルファブリケーションの可能性や、その技術の認知を広めたく始まったのがYouFabでした。この10年でデジタルファブリケーションの技術は成熟し、分野も領域も大きく広がってきています。それに伴いYouFabも領域を広げ、ジャンルレスに世界中から作品を募るグローバルアワードに成長してきました。

YouFabは、デジタルファブリケーションの恩恵を私たちが享受し続ける中で、クリエイターと社会が繋がるグローバルなプラットフォームになることを目指し、今年度も開催されています。

YouFab2021 特別賞 “Panasonic賞”

特別賞の「Panasonic賞」においては、本年度のテーマである”Democratic experiment(s)”のもと、社会やくらしをより良くする作品を募集しています。

受賞作品は、パナソニッククリエイティブミュージアムAkeruE(アケルエ)においての常設展示、またはAugLabやPanasonic Laboratory Tokyoとの共同研究に招待される可能性があります。

オンラインイベントでは、コーク氏、池之内氏の自己紹介や活動に関するプレゼンテーションから始まりました。

創造的な衝突--考えるということ、そして未来のためのものづくり

コーク氏のプレゼンテーションでは、彼女がこれまで手がけてきたアートプログラムに関する内容を中心にお話しいただきました。

ジュネーヴにあり、科学者とアーティスト間の「創造的な結束」の場として機能しているArts at CERN*プログラムの創設者であるコーク氏は、この出会いこそが、人々が境界を越えていくための鍵だと言います。

CERNでは、110カ国から集まった12,000人もの科学者が、宇宙がどのようにして生まれたのかを解明するという共通の目的のために働いていています。宇宙がどのようにして、なぜ生まれたのかを考え、パラダイムを超えて更なる知識を得ようとする物理学者とアーティストは、ある意味で「双子の魂」だと彼女は話します。

彼女は様々なプロジェクトを通じて、「知識というのは実は限定的で、世界を包み込むのは想像力なのだ」というアインシュタインの言葉にもあるように、クリエイティブなプロセスと想像力で限界を超えた景色を見ることに喜びを感じています。

*CERN:欧州原子核研究機構

「知識というのは実は限定的で、世界を包み込むのは想像力なのだ」

ものをつくる前に人をつくる

パナソニックは、世界を元気に、くらしを理想に、という信念があり、今年のテーマである”Democratic experiment(s)”に共感する要素が多くあると池之内氏は言います。SDGsに代表される複雑な地球規模の社会課題を鑑みると、もはや人類のみならず、地球環境やエネルギー、動植物などを含む森羅万象との関係を見つめ直し、様々なステークホルダーと共に、くらしと社会を理想にしていくことを考えなければならないからです。

パナソニックの創業者の松下幸之助は、「物をつくる前に人をつくる」ということを掲げていました。この理念に基づき、パナソニックは次世代育成にも力を入れて取り組んでいます。

プレゼンテーションでは、パナソニックセンター東京が運営するクリエイティブミュージアムAkeruE(アケルエ)についての説明がありました。

AkeruE創造することの大切さやSTEAM(Science、Technology、Engineering、Art、Mathematics)の考え方を軸とした施設です。「ひらめきをカタチにするミュージアム」をコンセプトに、インプットするだけでなく、自ら手を動かしてアウトプットできる場も設けています。AkeruEにはアーティストたちによる素晴らしい展示作品がある他、リサイクル素材を使った工作エリアや映像制作のできるスタジオも併設しています。MITメディアラボのレズニック教授が言うように「子どもたちの将来の幸せと成功の鍵は、創造性にあると信じている」と池之内氏は言います。

*パナソニックセンター東京
*AkeruE

パナソニックセンター東京が運営するクリエイティブミュージアムAkeruE(アケルエ)

トークセッション

プレゼンテーション終了後は、FabCafeのCCOであるケルシー・スチュワートがモデレーターを努め、今年のテーマ「Democratic experiment(s)」に対するアリアン氏とアレックス氏の解釈を深堀りする問いが投げかけながらトークセッションが行われました。

ケルシー:アリアンさん、プレゼンテーションを聞かれてどう感じられましたか?

アリアン:松下幸之助の「人をつくる」という言葉に共感しました。私がいつも言うのは、私たちの提供しているアートプログラムは単に芸術のプログラムというよりも、文化交流プログラムであるということです。

CERNでは、科学者たちが宇宙がどのように誕生したのかを突き止めようとしているのですが、アーティストと科学者たちの間にはしばしば衝突がありました。科学者たちはデータや方法論にこだわりがあり、アーティストたちが自分たちの時間を無駄にしていると不平を口にしていたのです。ですが、科学と芸術が共通の信念のもと結束することにより、人々の価値観大きく変えることができます。CERNでもまた、アーティストたちの働きを通し科学者たちと対話し、世界は科学だけで成り立っているのではなく、科学以外の営みがどのように世界を形作り貢献しているかを共有するきっかけを作りました。

ケルシー:Art at CERNではアーティストたちに作品を作ることは強制せず、プロセスそのものに集中できるようにしたとポッドキャストで言われていたと記憶しています。どうしてそのような形式にしたのでしょうか?

アリアン:そのようなスタンスを取ろうと思ったのは、彼らも科学者同様にアーティストの活動も基礎研究の一部であることを強調したかったからです。そして、この基礎研究は、人間がこの世界で進歩するための絶対的な鍵であり、特に他の存在とつながりが起こることを意味しています。

ケルシー:審査委員長である伊藤亜紗さんの今年のテーマに対する発言から引用する、「誠実なものづくり」のお二人の定義を教えてください。

アレックス:松下幸之助の言葉に、「失敗することを恐れるよりも真剣でないことを恐れたい。真剣というのは、誠実に、謙虚に、熱心にやることである」というのがあります。何かを始めるとき、これら3つが重要で、誠実なものづくりにも通じるものがあると私は考えます。

アリアン:心のこもったものづくりというのは、誠実なものづくりにつながると私も信じています。また、ものづくりの過程で関わるすべての人あるいはものへの影響も考えなくてはいけないと思っています。

ケルシー:今年のテーマである”Democratic experiment(s)”を、ご自身の活動や作品にどのようにつなげますか?また、”Democratic experiment(s)”にとって最も大事な要素は何だと思いますか?

アリアン:物理学では、この椅子も私の髪の毛も、この世にあるすべてのものは粒子でできていて、私たちの体の中では、宇宙が生まれた瞬間を再現する小さい爆発が起きていると言うんですね。私たちの中で物質と反物質が出会うと閃光が起こります。これは、この世に存在するすべてのものが、感覚があるかないかにかかわらず、すべてつながっていて、互いに関連していることを物語っています。民主主義の実験とは、何を作るにしても、いつでもこの事実を意識することだと私は考えています。

アレックス: 3Dプリンターやインターネットなどの技術によって、誰もがものづくりができるようになったことで、最近ものづくりの概念が変化してきていると感じます。ものづくりのあるべき姿を考え、議論し、試してみることは、私たちにとって大切なことです。また、ステークホルダーのことを考えると、人間だけについて考えるのではなく、地球環境やウイルスなど人間以外との関係性も含めて、良い生活、より良い世界を実現するために考えていかなければなりません。

ケルシー:様々なステークホルダーと関わる中で、どのように意思決定を行い、摩擦を克服するかというのは、何か新しいものをつくる際に多くの人が課題に感じることであると思います。また、人間以外のステークホルダーはどのように考慮すればよいのでしょうか?

アリアン:ものづくりの過程での摩擦を克服するためには、共通の目標を強調することで、人々が団結し、好奇心に火をつけたり、再燃させたりすることが重要です。コミュニケーションと共通のゴールを持つことがとにかく重要です。

非人間のステークホルダーに関しては、技術を作るときに、時間や地球への影響について考える必要があると思います。どのように再利用され、リサイクルされるのかについて考えなくてはいけないし、時間や素材がもたらしうる影響について考える必要がありますね。

アレックス:異なる背景を持つ人々は当然異なる意見を持つので、共通のゴールを設定するのが難しいこともあります。そんな時は、私たちはよく企業理念に立ち返り、「これは社会に貢献しているか?私たちの生活を改善し、文化の進展に寄与しているか?」と自問自答します。

ケルシー:新しくものを作るとき、想像力を働かせるにあたり、何が最も大切なのでしょうか?

アリアン:想像力とは人間に与えられた超能力のようなものだと私は考えています。大事なのは、自分が考えたこともないような場所へ、想像力に連れていってもらうことですね。

アレックス:想像力は、異なる視点を持ったり、自分の視点を変えることにおいて役立つと思います。

ケルシー:最後に、今年のYouFabの応募者たちに何かメッセージをお願いします。

アリアン: 応募者の方々は、どうすればより良くつながることができるか、どうすればより良くコミュニティになることができるか、といったことを考えているのではないでしょうか。テクノロジーはある程度有効ですが、さらに向上させ、より多くのものを生み出す方法はないのでしょうか。「私」ではなく「私たち」というのもキーワードですね。

また、使用するあらゆる素材の意味について、環境への作用について、そして人間や人間以外のステークホルダー、時間や空間への影響などについて考えてほしいと思います。

アレックス:YouFabに参画しているパナソニックのR&Dチームが取り組んでいることの一つにAIやロボティクスがあるので、そのような技術や面白いアイデアの作品があるといいですね。また、人間のwell-beingやマインドフルネスを追求した作品や、教育に関するものの応募も期待しています。

変わりゆく世界を、人間だけでなく森羅万象と共存していくためには、今一度ものづくりのあり方を見つめ直し、想像力を駆使しながら境界線を超え、ステークホルダー同士の衝突を繰り返し克服していく必要があります。Democratic experiment(s)は、そのようなものづくりのプロセスの新しい指標とも言えるのかもしれません。

YouFab2021では、10月31日まで応募を受け付けています。受賞者は、2020年4月にオープンしたパナソニッククリエイティブミュージアムAkeruEに作品が展示されます。

作品の形態は問わず、あなたのローカリティから導きだせる最大限の解をお待ちしております。