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Fusion

Fusion

MHD Yamen Saraiji, Tomoya Sasaki

Category : STUDENT
By MHD Yamen Saraiji, Tomoya Sasaki (日本)

作品について

Fusionは、体に装着するタイプのアシストシステムで、我々のコミュニケーションや相互協力のやり方を変えるものである。テクノロジーと体を組み合わせ、相互協力自体を変えることによってテレプレゼンス技術を活用する新たな方法を模索する。このプロジェクトは複数人が同一の視点、もしくは一つの体をシェアして共同作業を行えるようにすることを目的に開始された。さらに他者との共同作業の機会を増やすためには、どう我々の体を変えていけばいいのかという点に着目している。これを使えば、例えば専門家がその場にいなくても新人に道具や機械・器具の使い方を教えたり、アシストすることができる。またこのシステムを活用すれば、高齢者や障害のせいで移動が困難な人でも仕事に関わり続けることができる。このシステムのプロトタイプは、ボディシェアリングに秘められたポテンシャルを把握するのに役立った。例として、アームは手首に装着することで外骨格の役割を果たし、他者がアームを遠隔操作することで、新たなテクニックやスキルを伝授することが可能だ。人に何か新しい作業のやり方を教える伝えるときに便利なシステムになるだろう。また、セラピストが患者のリハビリをアシストする、といった使い方も可能となる。

制作の動機

テレプレゼンス・テレイグジスタンスロボットの研究が進んだことで、地理的制限に縛られない、体を代理操作するアバターシステムが確立した。こういったアバターシステムは我々の体をより効率的に使い、肉体的貢献度を高める上で大変大きなポテンシャルを持つ。しかし、今までのアバターシステムによるアプローチは、主に人工の体を作ることによってユーザーの経験を再現することに主眼を置いており、その体をどう操作するかに焦点を当てていた。一方でFusionは新たなタイプのアプローチであり、テレプレゼンスシステムを装着可能な装備として扱う。これによって複数のユーザーが一つの行動を共有、同時参加が可能となった。相互協力という面で新たなポテンシャルを持ったこのアプローチは、共同作業の質を高めたり、人に技術を伝える際に非常に有用だ。ボディシェアリングの新たなポテンシャルを模索するとともに、一つの体を複数人が共有するシステムの可能性を探っていきたい。

制作方法

Fusionの最終バージョンに至るまで、試行錯誤を繰り返してきた。まず様々なテレプレゼンスアプリケーションに使用することができ、人間の頭部の感覚に合わせて調整された3つの軸を持つヒューマノイドヘッドを制作した。(視覚・聴覚システム、動作など) さらに人間の腕を模した人工アームも制作した。これは目的に合わせてカスタマイズが可能だ。(手をつけたり、その他追加の部品を取り付けることも可能) プロトタイプ制作の課程では、ハードウェア作成前にFusion用のカスタムビルト・シミュレーション環境を整えた。VRも使用したが、アームの検証をしたり、モーションマッチングやボディマッピングをする上で欠かせないファクターだった。また、3DプリンタやCNCマシンを利用してアームやヘッドと後ろに背負う本体のプロトタイプを製造した。先に整えてあったシミュレーション環境のおかげで安全は確保されており、実験時の怪我の心配なども特になかった。

仕様

本システムの全容は、アーム2本とヘッドのついたバックパック型の装置にバッテリーを搭載し、1時間程度使用することが可能。
本体は3DプリントされたパーツとCNCベースで製造されたリンクで構成されている。3Dプリントに用いた材料は主にABSとナイロンで、CNCリンクは軽量かつコストの面で比較的優秀なアルミニウムで製造した。
重量:10㎏

JUDGES, COMMENTS

  • 吉泉聡
    TAKT PROJECT 代表
    デザイナー/クリエイティブディレクター

    他者のテレプレゼンスロボットと対面するわけでもなく、他者が自身に部分的に憑依したような状況。
    自身の体を拡張したような状況ともちょっと異なるこの体験は、どのようなコミュニケーションを生み出すのだろうか?
    そしてそれは、どんな生活・生き方につながっていくのだろうか?一見すると機械的な印象が強い作品だが、そんな人間としてのあり方について、新しい問いかけを感じることができる作品です。