SEEWINNERS
YouFab Global Creative Awards 2020 全受賞作品を発表致します。
Frederick Phua Yiyang Shen Stephen Devlin Jinzhao Li
Francesca Dare
開元宏樹
Nathalie Gebert
Nestor Pestana with Deborah Tchoudjinoff
石橋友也 吉田竜二 新倉健人
Jo Harrison-Hall
審査委員長 編集者
水の見えない魚 「ソーシャル・ディスタンス」ということばが一般に使われるようになって、もうしばらくすると1年が経つことになろうかと思うが、時間が経つにつれ、言いえて妙な、味わいのあることばだと感じるようになった。コロナウイルスによるパンデミックは、それが起こるまでの時間のなかで、わたしたちが意識することの少なかった、「人と人の間にある時空」というものを鋭く意識させることとなった。「魚の目に水見えず」とはよく言われるが、「人の目に空気見えず」とでもいうべき状況のなかに置かれたのだ。といって、もちろんいくら目を凝らしたところで、ウイルスの姿をみることはできないのだけれども、それでも、わたしたちは、人との間にマスクやシールドや距離を置くことで、自分と誰かの「間」をつねに意識せざるをえなくなった。 今回のYouFabアワードのために「コンタクトレス(・バイ・デフォルト)」というお題を設定した際に、自分がいま書いたようなことを明確に意識していたかというと、実はそうではない。お題を決めたとき、自分が想定していたのは、あくまでも主人公が「人」であるような作品やプロジェクトだった。つまり、人がどうやってパンデミックによってつくられた「距離」を乗り越えることができるのか、といったことがテーマだろうと思っていたのだ。ところが、応募作品を眺め、審査会を経るなかで、その見立てが間違いであることに気がつくことなった。主人公は、人ではなく、むしろ人と人との間にある「距離」、もしくは、その距離を構成している「間(ま)」、それ自体だったのだ。 グランプリ作品、準グランプリ作品はもとより、最終選考に残った作品の多くは、それぞれのやり方で、「人と人の間にあるもの」を問題にしていた。人と人の間にあるのは、例えば、飛び交う飛沫であり、静寂であり、グローバル規模のサプライチェーンを経てつくられたわたしやあなたの服だったりする。これまでは意識することのなかった「間」の時空が、これらの作品/プロジェクトを通して、得体のしれない生き物のように立ち上がってくるスリルを今回の審査では味わうこととなった。それも、各作品を鋭く読み解き、それぞれに隠された雄弁さに目を開いてくださった審査員のお三方の洞察なくして、それも確固たる実感とはならなかったはずだ。 自分がいかに「水の見えない魚」であったか。応募者からも、審査員からも突きつけられたアワードだった。
YouFab2020 総評
若林恵
審査委員長
編集者
水の見えない魚
「ソーシャル・ディスタンス」ということばが一般に使われるようになって、もうしばらくすると1年が経つことになろうかと思うが、時間が経つにつれ、言いえて妙な、味わいのあることばだと感じるようになった。コロナウイルスによるパンデミックは、それが起こるまでの時間のなかで、わたしたちが意識することの少なかった、「人と人の間にある時空」というものを鋭く意識させることとなった。「魚の目に水見えず」とはよく言われるが、「人の目に空気見えず」とでもいうべき状況のなかに置かれたのだ。といって、もちろんいくら目を凝らしたところで、ウイルスの姿をみることはできないのだけれども、それでも、わたしたちは、人との間にマスクやシールドや距離を置くことで、自分と誰かの「間」をつねに意識せざるをえなくなった。
今回のYouFabアワードのために「コンタクトレス(・バイ・デフォルト)」というお題を設定した際に、自分がいま書いたようなことを明確に意識していたかというと、実はそうではない。お題を決めたとき、自分が想定していたのは、あくまでも主人公が「人」であるような作品やプロジェクトだった。つまり、人がどうやってパンデミックによってつくられた「距離」を乗り越えることができるのか、といったことがテーマだろうと思っていたのだ。ところが、応募作品を眺め、審査会を経るなかで、その見立てが間違いであることに気がつくことなった。主人公は、人ではなく、むしろ人と人との間にある「距離」、もしくは、その距離を構成している「間(ま)」、それ自体だったのだ。
グランプリ作品、準グランプリ作品はもとより、最終選考に残った作品の多くは、それぞれのやり方で、「人と人の間にあるもの」を問題にしていた。人と人の間にあるのは、例えば、飛び交う飛沫であり、静寂であり、グローバル規模のサプライチェーンを経てつくられたわたしやあなたの服だったりする。これまでは意識することのなかった「間」の時空が、これらの作品/プロジェクトを通して、得体のしれない生き物のように立ち上がってくるスリルを今回の審査では味わうこととなった。それも、各作品を鋭く読み解き、それぞれに隠された雄弁さに目を開いてくださった審査員のお三方の洞察なくして、それも確固たる実感とはならなかったはずだ。
自分がいかに「水の見えない魚」であったか。応募者からも、審査員からも突きつけられたアワードだった。