2020年度 審査結果発表受賞作品を見る

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WINNERS

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Windows

Junxue Shao Sherry

Windows

Concept

COVID-19の大流行の中、人々は自宅での自主隔離生活を送っている。 普段の社会的な繋がりがオンライン上でのコミュニケーションのみに縮小されるのに伴い、多くの人々がバーチャルな世界に浸ることを毎日の習慣にしつつある。 彼らが現実での存在感を確かなものにするために、触覚を用いるコミュニケーションの必要性が急激に高まっている。 窓は、外の世界を探検するための手段として、多くの文学や芸術作品では希望の象徴となっている。 現在のストレスの多い状況でさえ窓は、希望を届けるための方法を与えてくれるのだ。ニューヨーク市民は午後7時になると一斉に手を叩き叫び、医療従事者に声援を送っている。 もし窓を、身体的なコミュニケーションの手段として使うことができたらどうだろうか。 メッセージの伝達は、LEDの飾りやスピーカーなど窓に取り付けたものを通じて反映させることができる。 身体周りの環境を少し変えることで、人への遠隔操作が可能であるということを示す一助となるだろう。 大都市ではもともと建物が互いに近接して建てられていることから、このようなコミュニケーションを導入すれば、コミュニティ内の絆を深めるのに役立つだろう。

Junxue Shao

Beijing

デザイナー/クリエイティブな科学技術者/アーティスト 同済大学でコミュニケーションとメディアデザインのバックグラウンドを持ち、現在ニューヨークのパーソンズ・スクール・オブ・デザインで美術学修士課程を専攻。 デザインと、テクノロジー、芸術表現との交わりに情熱を注いでいる。 食べ物、宿泊施設、社会構造の未来に最もわくわくしている。 創造的なコーディングと人間と非人間の知能のコラボレーションの可能性を探るための方法としてテクノロジーを用いることが大好きである。

Webサイト:https://www.shaojunxue.com

JUDGES, COMMENTS

  • 小川さやか
    立命館大学先端総合学術研究科教授
    文化人類学者

    Sherry Shao氏のWindowsは、ごくふつうの窓を使った物理的/マルチモーダルなコミュニケーションの可能性を追求することにより、COVID19禍中の/後の世界を展望している点で独創的なものとなっています。
    この作品では、屋内と屋外とを隔てるガラスにすぎない窓が、COVID19渦中で隔離された人々の希望の象徴へと転換されています。恋愛小説やマンガ、映画などで描かれる窓越しのコミュニケーションのように、文化史において窓は、ロマンスや情熱と深くかかわってきました。本作品は、そのような窓の文化的な価値を、パンデミックの状況下に対応する、マルチモーダルな仕掛けへとアップデートしたものだとも言えるでしょう。
    ただし、この作品のテーマは、パンデミックという限られた状況をはるかに超えています。都市化や仮想現実化の進展にともない、リアルな連帯の欠如が世界的な問題となってきました。都市社会では、隣人の顔を知らないことも不思議ではありません。仮想空間では、数多くのアバターと共在しているにもかかわらず、孤独を感じることがあります。現代社会では、リアルな社会的絆を再構成する必要性を認識しながらも、社会に踏み出すことができない「引きこもり」も数多くいます。
    Windowsは、「ひとりでいながら、ともにいる」ことを可能にする、そのシンプルで創造性にあふれ、楽しい仕掛けにより、これらの現代的な課題に対する解決策を提案しています。まさに個人に安心感を与え、具体的な社会的絆を強化しうる作品です。
    このような理由により、審査委員会は、COVID19の状況に立ち向かう、シンプルでありながら力強い作品である、Sherry Shao氏のWindowsにStudent Awardsを授与します。